企業がミッションやビジョンを定め、自社の環境を詳細に分析した後、次に進むべきステップは全社戦略の策定です。
全社戦略とは、ミッションやビジョンを効果的に達成するために、企業が持つ経営資源をどのように最適に配分するかを考えるプロセスです。
具体的には、企業の強みを生かせる「コア・コンピタンス」、その強みを最大限に活用できる「事業ドメイン」、そして事業の最適な配分を図る「事業ポートフォリオ」の決定が含まれます。
全社戦略の「コア・コンピタンス」の見極め方とは?
ビジネスで成功するために、企業は「コア・コンピタンス」を見極める必要があります。
これは企業の独自の強みで、他社が模倣できない核となる要素です。
ビジネスは戦いのようなもので、強力な「武器」がなければ競争で勝つことはできません。
コア・コンピタンスを特定するには、以下の5つの基準を考慮します。
- ①模倣可能性が低いか
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他社が簡単に真似できないものでなければなりません。
模倣されやすいものは、資金力のある競合に追いつかれる可能性があります。
- ②移転可能性が低いか
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独自の強みが他社に移転しにくいものであるべきです。
他社に容易に移転できる場合、独自性を失います。
- ③代替可能性が低いか
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他の技術や方法で容易に代替されないものが望まれます。
技術進歩の速さを考えると、すぐに陳腐化するリスクがあります。
- ④希少性が高いか
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他社が持っていない、獲得が困難な特性を持つものが理想的です。
一般的な強みは強力な武器とはなりません。
- ⑤耐久性が高いか
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強みが長期間持続するものでなければ意味がありません。
ライバル企業に追い越されたり、時代遅れになるリスクも考慮する必要があります。
企業はこれらのポイントを踏まえて、他社から真似や移転、代替が難しく、希少性と耐久性が高い強みをコア・コンピタンスとして定める必要があります。
このようにして確立されたコア・コンピタンスは、企業がライバルに対して競争優位を確保し、ビジネスの成功を収めるための重要な要素となります。
ねこ社長がわかりやすく解説
全社戦略での事業ドメインの決定とは?企業の全社戦略における重要ステップ
企業が全社戦略を策定する際、自社がどの市場で活動するか、つまり「事業ドメイン」を明確に決定することが非常に重要です。
事業ドメインを決定することによって、企業は自社の限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ)を最も効果的に活用できる分野に集中させることができます。
これにより、大きなチャンスがあっても自社の強みを生かせない事業に参入しないという明確な決断を下すことが可能になります。
事業ドメインの決定は、以下の3つの方法から行うことができます。
- ①製品やサービスから決定する
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この方法では、具体的な製品やサービスを軸にして事業ドメインを定義します。
(例)パソコンや周辺機器の製造、リゾートホテルの運営など、特定の製品やサービスを中心に事業を展開。
- ②市場ニーズから決定する
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このアプローチでは、特定の顧客層のニーズを満たすことに焦点を当てて事業ドメインを決定します。
(例)富裕層を対象に資産運用や高級旅行などのサービスを提供する事業を選ぶ。
- ③コア・コンピタンスから決定する
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この方法では、企業の「武器」となる独自の強みや能力を踏まえて、その強みが最も活かせる「戦場」、すなわち事業ドメインを特定します。
(例)ソニーがエレクトロニクスからエンターテイメントや金融へと事業ドメインを拡張したのは、ブランドというコア・コンピタンスを最大限に活用する。
事業ドメインを決定する際には、自社の現状や将来像を考慮して、適切な広さのドメインを選ぶ必要があります。
狭すぎるドメインでは成長の機会を逃す恐れがあり、広すぎるドメインは経営資源の効率性が低下し、事業の方向性が不明確になるリスクがあります。
また、企業はコア・コンピタンスと事業ドメインを組み合わせることで、効果的な戦略を立てることができます。
これには、既存のコア・コンピタンスを基に事業ドメインを決定する方法と、新しい事業ドメインを決定した後で必要なコア・コンピタンスを育成する方法の2つがあります。
最後に、コア・コンピタンスや事業ドメインは、一度決定しても常に見直しと拡大を行うことが重要です。
時代の変化や市場の動向に応じて、これらの要素を進化させ、企業の成長と持続的な成功を目指す必要があります。
ねこ社長がわかりやすく解説
全社戦略の事業ポートフォリオ管理とは?企業成長と安定のための戦略的組み合わせ
事業ポートフォリオ管理は、複数の事業を展開する企業が効率的に経営資源を活用するための方法です。
企業が限られた経営資源を持つ中で、どの事業に焦点を当てるかを決定することが、事業ポートフォリオの核心です。
これにより、企業は成長機会を捉え、環境変化によるリスクを回避できます。
事業ポートフォリオを最適化するためには、以下の3つの主要な要素を考慮します。
- ①事業の魅力度
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事業を選択する際には収益性が重要です。これには事業ライフサイクル、市場規模、成長性、競争の激しさなど多くの要因が関わります。
収益性が高く、成長可能性のある事業に重点を置くことが重要です。
- ②競争上の優位性
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市場での競争力を評価します。
マーケットシェアや競合企業の強み、自社の競争力を分析し、市場で優位に立てる事業を特定する必要があります。
- ③事業間の相乗効果
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複数の事業を展開する際には、事業間で相乗効果を生むことが望ましいです。
相乗効果には、販売チャネルや生産方式の共有、共同の研究開発などが含まれます。
事業ポートフォリオを管理するには、「事業ポートフォリオ・マトリクス」というツールが使われます。
このマトリクスは、市場成長率と相対マーケットシェアを基にして事業を分類し、最適な組み合わせを判断します。
①問題児(Question Mark)
市場成長率は高いが、マーケットシェアが低い事業。
これらの事業は将来性がありますが、成功するためには投資が必要です。
②花形(Star)
市場成長率も高く、マーケットシェアも高い事業。
売上は上がりますが、投資が継続的に必要です。
③金のなる木(Cash Cow)
市場成長率は低いが、マーケットシェアが高い事業。
安定した収益をもたらし、他の事業への再投資の源泉になります。
④負け犬(Dog)
市場成長率も低く、マーケットシェアも低い事業。
赤字の可能性が高く、撤退を含めた見直しが必要です。
事業ポートフォリオ・マトリクスを使用することで、企業は経営資源を効果的に配分し、最適な事業組み合わせを実現することが可能になります。
これにより、企業は長期的な成長と安定を目指すことができるのです。
ねこ社長がわかりやすく解説
まとめ
企業がミッションやビジョンを定め、自社の環境分析を終えた後に進むべきは全社戦略の策定。
企業は自身のコア・コンピタンスを特定し、これを最大限に活用できる事業ドメインを定め、経営資源を最適に配分する事業ポートフォリオを作成。
コア・コンピタンスとは、企業固有の強みであり、他社に模倣、移転、代替されにくい、希少性と耐久性を備えた特性。
事業ドメインの決定は、企業が市場内でどの領域で活動するかを明確にし、その強みを最大化できる分野へ経営資源を集中させること。
事業ポートフォリオ管理では、各事業の魅力と競争力、及び事業間の相乗効果を考慮して、資源を適切に割り当て、企業の成長と安定性を追求。
この一連のプロセスを通じて、企業は自らの競争優位性を強化し、定めたミッションとビジョン達成に向けた効果的な戦略を実行可能となる。
それでは、また